初期の戦略
現存する史料から考えて、世界で最初に戦略の概念を使用したのは孫子だと考えられる。戦略という言葉こそ出てこないものの、国家戦略や戦争哲学を示し、また軍事学的な戦術や軍事地理の内容を論じて戦略の思考法を示しており、今日においても孫子は極めてすぐれた戦略教書と考えられている。ヨーロッパにおける戦略の概念はクセノフォンが将軍、または将軍の軍隊指揮を意味するSTRATEGOS、STRATEGIAという言葉を用い、これが戦略の語源となった。しかしながら当時の戦略は定義が曖昧であり、戦略と戦術は区別されず戦争術や兵術として理解していたために、現代のような意味を必ずしも持たなかった。
マキャヴェッリは近代西欧における軍事思想の始祖的存在である。『戦術論』において戦争目的は、自己意志を相手に強制することによって、敵の完全敗北という成果を得、速やかに終結させなければならないと定め、敵の軍事力を破壊する戦略を主張した。ナポレオン1世はマキャヴェッリの思想を継承しており、当時「大戦術」という言葉を用いて通常の戦術と区別し、大局的な戦争指導を行って戦略と戦術の概念的な分化を行っている。この頃にマイゼロアは古代戦史の研究から西欧で初めて戦略と戦術という用語を区別して使用し、戦略の用語と概念を西洋に普及させた。
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この戦略の概念は当時ナポレオン戦争の研究を行っていた多くの軍事学者たちに影響を与えた。クラウゼヴィッツは個々の戦闘で問題となる戦術と対比し、「戦略とは戦争目的を達成するために戦闘を組み合わせる活動だ」と述べ、戦略を戦争での使用目的に限定した。これは後にクラウゼヴィッツ主義の軍事研究者たちによって過剰に教条化され、決戦至上主義を生み出すことになる。